どこかに達するのが人生というわけではない
「道を実践することのうちに解脱がある
道によって解脱に達するのではなくて
道そのものが解脱なのである」
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今回のブッダ最後の旅路を辿る旅に向けて
旅のお供になってもらった本
中村元先生著
「ブッダ 神々との対話 サンユッタ・ニカーヤI」での
中村先生の解説文より。
これは、僕の今回の旅で一番感じた事でもあります。
今回のインドの旅は
ブッダが35歳で悟りをひらいたといわれるブッダガヤから始まり、
ブッダが多くの時間を過ごし様々な教えを残したラージギルを巡り、
最後の旅の雨季を過ごしたヴァイシャーリーを経て、
ブッダが80歳で息をひきとり火葬されたクシナガラまで。
お陰様で、無事に全て辿る事ができました。
通常ですとチャーターバスやタクシーで巡るような
アクセスがしにくい場所が多く
限られたお金で旅をする僕には
目的地への行き方が定かではなかったり
辿り着けるかわからない時もありました。
が、有難くも、行く道すがらで様々な人たちに支えられて巡る旅となりました。
たどり着いた各目的地は
ブッダの聖地でありながら
寂れた雰囲気も多く
残された遺跡や仏像を見ても
正直、それほど心打たれるものではありませんでした。
ですが、そこに至るまでの道のりで体験した
素晴らしい自然の景色や
時に厳しい自然のありさま
その中で逞しく、でも他人にやさしく生きる
美しい人たちの姿。
そして、何かを願い一生懸命になって祈る人の姿。
そういったものに触れる度に
自分が今も生かされている事、
名も知らぬ多くの先祖や
ブッダからの2500年に渡り教えを紡ぎ生き抜いてきた
数えきれぬ先人達を想い、
それらの方々が居て今の自分の姿や生き方があるのだと
深く感じあるものがありました。
「道を実践することのうちに解脱がある
道によって解脱に達するのではなくて
道そのものが解脱なのである」
ではありませんが
「目的地へを目指すことのうちに旅がある
目的地に着くことによって旅が完成するのではなくて
そこへの道すがらそのものが旅なのである」
と言った、ありきたりとも言える実感でした。
と同時に、
最終目的地であったクシナガラで
ブッダが荼毘にふされた地に訪れても
旅の終わりの感覚はなく
むしろ旅が始まるのだ、
いや、ずっと前から旅の途中でしかないのだ、
そんな感覚が沸き起こりました。
これから、ナーグプルへ向かう旅が残っているから、ではありません。
ナーグプルは自分が2年前に
今の生き方を得ることになった地です。
その生き方を授けてくださった佐々井秀嶺上人のもとへ馳せ参じる旅です。
でも、それはこの先1週間ほどナーグプルへの滞在の”旅”ではなく
これから一生かけての、
すぐに終わるのやらいつまで続くのやら分からぬ
今後の人生に向けての”旅路”のように感じる自分がありました。
そして、この”旅路”は
自分が得度を受けさせて頂いた2年前に始まったものでもなく
何なら自分の誕生から始まったものでもなく
ブッダの誕生の前からすらずっと続いているような
一連の生命の紡がれのようなもの。
それは輪廻だとか魂だとか言ったものなどではなく
ただ事実として起きている
人が人の想いに触れて生き方に変化が訪れ
その人の”人生”が生まれていき
その人生の過程で出会ったまた別の人に
想いが渡されていく
そんな一連の流れのようなもの。
自分もその長い糸の一部なのだろうと感じたのです。
それは、どこかに辿り着く事を目的になどしていない
何かに成し遂げたり何かへ達したりすることを目的になどしてない
ただ、渡された紡がれを自分なりに紡いでいく過程そのものなのだ、と。
紡いでいこうなどせずとも、
ただ自分なりにもがき悩み、笑い、泣き、誰かに支えてもらい、
時に誰かを支えながら生きていく姿そのもののが、
後から「紡がれ」となっていくのだ、と。
そんな風に感じました。
”人生”という旅路では
何かの「達成」や「獲得」などにより人生の完成が起こるのではなく
どう生きるかの過程そのものが
先人から受け継ぎ、未来の人たちへの「紡がれ」となっていくのだろう、と。
さて、これから、どんな旅にしていこうか。
そこでは、素晴らしい景色や立派な建物のような”目的地”になど辿り着かなくてもよい。
何か心踊るような大きな体験を手に入れなくてもよい。
願わくば、
自身も心おだやかに居続けられ、
出会う人たちにも、
心おだやかな時間となってもらえるような
自身であれるよう
ささやかながら努力を重ね
その心の触れ合いを楽しみながら
参って行きたい。
そんな状態を続けて生きたい。
そんな、想いを感じております。
この後のナーグプルにて
そしてその後、
何処かの地にて触れ合う方々との縁を楽しみにしつつ
ただ日々を有難く
そして気をつけて
大切に参りたく思います。
皆様、いつもお付き合いくださり
有難うございます。