「とにかく頑張らないと」中毒?

現代を生きる我々は

「とにかく頑張らないと」の中毒にかかっているのかもしれない。

そんな戯言です。


40代くらいの方なら聴いたことがあると思いますが

かつて「24時間戦えますか!」と

明るく元気よく高らかに歌われれる栄養ドリンクのテレビCMが流行りました。

そのCMが流れていた時代を調べたら1988年のことでした。

まだバブルの余韻があった頃でしょうか。

今でこそ「ブラック企業」という言葉がありますが

その当時は、24時間でもモーレツに働くのが

「イケてる」姿と捉えられていたのだと思います。


さて、あくまで私見ですが、なぜ、このような風潮が生まれたのかについて。


第二次世界大戦の敗戦は、物質的にも心理的にも

大いにくじけた、強烈なショックをもたらすものだったのでしょう。

とにかく食べるだけでも苦しかった苦しさからの解放を求めて、

一方で、耐え抜いて努力したのに結果に出なかった(負けた)悔しさや、

戦前の様々な不条理に対するやるせなさや怒りの矛先として

日本の「高度経済成長」へのエネルギーが生まれた。

食べられる物の充実、衛生環境の改善といった、生きるための土台の改善とともに

冷蔵庫、洗濯機、掃除機、カラーテレビ、などなど

生活で極めて実感のある「進歩」「新しさ」といった

生活の変化に溢れていった。戦後の数十年は、そんな時代だったのかもしれません。


だから、働く程に、努力するほどに、「生活が豊かになる」実感を得やすかった。

生きる意味として、「豊かな暮らしを目指す」というのが、わかりやすく

「物質的な豊かさによる、生活の変化」もわかりやすかったのでしょう。

そのために、一生懸命勉強して、いい大学に入って、

「良い」と世間で言われる職業につけば、

そしてそこで一生懸命頑張っていれば、

「豊かな生活」につながると信じられていたし

ある程度は実感できることもあった。


大昔の話しではなく、たった80年ほどのお話です。

「頑張るほど豊かな生活」の実感は、

(肌感ですが)30年前くらいまではまだ強く感じられていたものの、

ここ30年くらいは、どうでしょう。

この30年ほどは、それほど生活の質を劇的に変えるような

新たなものはコンピューターやインターネットの普及くらいかもしれません。

もちろん、車は衝突を予防してくれたり、

全国高速道路や新幹線でいけるようになったり

掃除機は自動で動いてくれたり、様々なものが即日に安く手に入ったりと

有り難い変化は多いです。

が、日常生活で「冷蔵庫や洗濯機がある/無し」のレベルの変化まで

大きなものは多くないかもしれません。


すでに、これまでの技術の発展で、

ヒトが安全に食べて、快適かつ衛生的な環境で過ごし眠る、といった生きるに関わる事は、

ある程度満たされてきているのかもしれず、

今起きている技術や経済の成長は、

日常で生活するうえで「あると肉体的に助かる」冷蔵庫や洗濯機とは違い

より何かを学び、体験するとか「あると精神的に助かる」ものが多いのかもしれません。

無いと困るわけじゃないかもしれないけれど、

あると未来が広がるかもしれない新たな「可能性」のために頑張っている、

と言えるかもしれません。



ただ、ここで問題になるのは、じゃあ、どのような(精神的な)満たされを目指し

頑張っているのだろうか。ということです。

頑張った結果、広がるかもしれない「可能性」はどこに向かうのだろうか

ということです。


以前であれば、いつでも冷たい食品が保てる冷蔵庫とか

暑い夏や寒い冬でも快適にすごせる冷暖房とか、肉体レベルのメリットが

「頑張るほどに」手に入ったのですが、

ここから先は、頑張るほどに、どのようなメリットにつながるのだろうか。

勉強して、よい点数をとって、良い言われる大学に入ったら、

どのようなメリットになるのだろうか。

お金がたくさん手に入ったら、どのようなメリットにつながるのだろうか。

「いろいろできるようになるよ!」という"可能性"は広がるのだが、

自分は、どこに向かえば、「幸せ」の実感は得られるのだろうか。

じゃあ、一体、自分は何を目指して頑張ればいいのだろうか・・・。

ヒトは24時間闘い続けるなんてできるはずはない。

しかも、頑張り続ける先には、何かリターンがあるのだろうか…。


でも、なんだか「頑張り続けなきゃ」いけないような風潮は感じる…。


こんな感覚が、なんだか「満たされないモヤモヤ」を生み出しているのかもしれません。
(そのようなご相談をよく頂戴いたします)


「さらなる可能性」があるのは、素晴らしく、有り難いことだと思います。

でも、「さらなる可能性」があるということは、

「人生で、(本当はできるかもしれないのに)まだできないことがある」

という気持ちをもたらすかもしれません。

それは、尽きない「満たされなさ」を感じさせるものかもしれません。


欲しい何かを手に入れる。目標の試験をパスする。

意中の人と結婚する。目指していた企業に合格する。

憧れの立場を手に入れる。多くの人からの注目をされる。


これらは、全部、人生という線の1点の出来事でしかありません。

それらは、新たな可能性を拓いてくれる出来事かもしれませんが、

その点を通りすぎた瞬間から、それまでの「憧れ」は「日常」に変わる。

すぐに、慣れて、当たり前のものになる。

なんなら「努力して掴んだのだから、失いたくない」と感じさせるものになるかもしれない。

その不安を埋めるためにも、何かまた「新たな可能性」が欲しくなる。

また、頑張らないと。


でも、どこまでいっても、「それをつかめば、人生全部が満たされる」というものなど無いのでは。

どこまでいっても、新たな「やりたいことリスト」が並んでいくかもしれない。


その進み方では、仮に毎日20時間闘い続け、頑張り続けられたとしても、

それは人生ずっと続けられることは起こりにくく

「満たされた生き方」というゴールなど来ないのかもしれない。


何が、自分の満たされになるのか、自分なりの精神の方向がないと

ただ頑張り走るのは苦しいものかもしれません。



頑張らなくたっていい、ということではないのです。

何にむかって頑張っているのか分からずに、

ただ何か頑張らなきゃと頑張り続けるのは苦しさをもたらすのではと言いたいのです。

もし、苦しさを感じるなら、

時に、勇気をもって立ち止まって、なぜ頑張っているのだろうか。

たまには深呼吸してもよいのではと感じるのです。


小さい子供のように、忍耐力や集中力を育てる意味で、

様々な対象に、何かにひとまず打ち込んでみることは大切だと思います。

ですが、大人だって頑張り続けるのは疲れるのだから、子供だって難しいでしょう。


それに本来、能力を伸ばすために頑張るプロセスだったのに、

「ただ頑張る」ことが目的化してしまうと、楽しくない努力の時間が生まれてくる。

大人だって、どんな満たされにつながるか分からずに

頑張り続けるのは身体もココロも持ちません。

よき点数をとる、よき給料を得る、これだけが「可能性」をもたらす道ではないかもしれない。

他にも、なにか頑張る対象の道はあるかもしれない。


繰り返しですが、何かあらたな可能性のための努力は大切だと思いますが、

可能性は常に広がり続けるので、なんとなしに追いかけ続けては

苦しくなるだけかもしれない。蜃気楼を追いかけるような苦しみになるかもしれない。



そんな時は

新たな可能性ではなく、今実感している、感覚に目を向けてもいいかもしれません。


未来の何かではなく、今眼の前にあるものにココロを傾けてみるのも大切かもしれません。

ただ、草木のニオイを感じ、鳥や虫の音を感じ、暑い日差しを(ほどほどに)感じ

触れ合える友達や、挨拶ですれ違う人たちとの縁を感じる。

それは、人生において、何かの目標となるような派手な「点」ではないですが

人生において、常に、その都度、続けられることかもしれません。

歳をとって、身体が思うようにうごかなくなっても、楽しめることかもしれません。


自分の何かプラスアルファの新しい可能性への頑張りだけではなく、

常におだやかに今ある世界を楽しめるココロ持ちを育ち「維持する」というのも

ときに「頑張ってみる」対象になるかもしれません。



繰り返しですが、頑張らなくたっていいということではないのです。

善き人生を目指すのに努力はつきものだと思います。

ですが、頑張り続けなきゃ、という感覚で苦しむなら、

そこからは離れる時があってもよいのでは、何につながる頑張りなのだろうと

立ち返ってみてもよいのでは。


ほどよさ、が大切なのだと思うのです。

ときに未来の何かの可能性ではなく、

今ある世界にココロを向けてみる機会があってもいいのでは。

そして、何に向かいたいのか、どうなれば自分は満たされそうなのかを

立ち止まって見つめてみるのが大切ではと思うのです。


そんな趣旨なのです。

頑張り続けなきゃ、走り続けなきゃと苦しさを感じる方ほど

ふと立ち止まって、自然の中をゆったり歩いてみて、

深呼吸しながら、なーんにも無い時間、

スマホもなーんにも見ない時間を持っても良いかもしれません。

無職の脳内花畑の戯言にお付き合いくださり、今日も有難うございました。


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